国立シンクロトロン放射線研究センター(NSRRC)の李耀昌(Yao-Chang Lee)博士率いる研究グループはこのほど、光源加速器を用いて今から1億9,500万年前の恐竜の化石を調査し、完全な形のコラーゲンを見つけることに成功した。研究成果は1月31日に「Nature Communications」に掲載された。
この国際研究グループのメンバーは李耀昌博士の他、江正誠氏、黄佩瑜氏、王俊杰氏、陳慶曰氏、カナダ・トロント大学のRobert Reisz教授、国立交通大学(台湾北部・新竹市)の鍾昭宇博士、国立中興大学(同中部・台中市)の黄大一名誉教授、国立中央大学(同北部・桃園市)の張栄森教授、そして向陽基金会の廖正豪博士。
李耀昌博士は、映画『ジュラシック・パーク』での恐竜復活は夢ではないとしている。研究グループは約2年間の研究の中で、シンクロトン放射線研究センターの光源加速器を用いて非破壊性の計測を行い、1億9,500万年前のルーフェンゴサウルスの肋骨の化石に残った微細な血管の通り道から、完全な形のコラーゲンとヘマタイト(Hematite)を見つけ出した。この結果は、これまでに伝えられている全ての類似した発見と比べて少なくとも1億2,000万年は早いもので、現時点で世界最古、かつ完璧な形で保存されたコラーゲンだということ。
生物学者によれば、DNAの保存は521年が限界。しかし、李博士は、蛋白質は異なるアミノ酸によって構成されており、アミノ酸の中からDNAの配列を探し出せると説明、今回の研究成果を用いて遡っていくことで将来的には恐竜のDNAの配列方式にたどりつける可能性が極めて高く、恐竜の復活も夢ではないと話している。
シンクロトロン放射線研究センターによれば、李耀昌博士率いる研究グループは、10マイクロメートルの解析度の「赤外顕微分光法(Infrared Micro-Spectroscopy, IMS)」を用いて、厚さ約30マイクロメートルの化石片を対象とした非破壊式二次元スキャンを行い、さらに「分子フィンガープリント(Molecular Fingerprint)」で比較対照し、ルーフェンゴサウルスの肋骨の化石にあった微細な血管の通り道からコラーゲンを発見したことを確認した。これは血管壁の主要成分で、これまで一部の科学者が恐竜の骨を溶かしてコラーゲンを抽出した、破壊式の検査とは異なるものだという。
「Nature Communications」で発表された研究は、「Evidence of preserved collagen in an Early Jurassic sauropodomorph dinosaur revealed by synchrotron FTIR microspectroscopy」。